共通テスト対策に悩む受験生
ある塾の数学講師の方が嘆かれていた。今年度入試への後半戦に突入した夏休み明け、多くの生徒から同じような相談を受けたとのこと「共通テスト模試でなかなか得点が伸ばせない」というのだ。
大学入学共通テストは「暗記中心の試験から思考力を問う試験へ」のかけ声のもと、大学入試センター試験の後継として今年スタートした。2017・18年度にかけて実施された試行調査では「太郎くん、花子さん」の会話文や日常のやり取り、複雑な設定などで問題文の量が大幅に増え、中には数学の本筋とは無関係な文章も出題され多くの受験生を戸惑わせている。模試でもそうした傾向の問題が出題され苦戦する生徒は多く、教師もどう指導したらよいのか悩ましく思っておられるようだ。
例えば「先生、共テ模試の数学IAで70点ぐらいしか取れません」と言う数学の実力が標準的な女子さん。センター数学の70点は基礎の理解が不十分であることを意味するが、共テ数学では違うかもしれない。失点の原因が「理解不足」なのか?「膨大な文章を読むのに時間がかかる」のか特定できないのだ。その女子さんには「教科の基本を固め、文章量の多い問題を読む訓練を積もう」とアドバイスしたが、後者は数学なのだろうか?と疑問に思ったようだ。
別の男子の場合はもっと深刻だ。彼は数学が得意で記述模試の得点は高いが、共テ模試の数学IAはやはり70点程度。現代文が苦手で膨大な文章を読んだり多くの図表を見たりして答える「非数学的な問題」に苦しんでいるようだ「センター数学の過去問なら90点を下回ることはない」と言う男子くん。彼があと2年早く生まれていたら、こんな苦労をしなくても済んだかも?と思ってしまう。
今年の第1回共通テストの数学は試行調査に比べると文章量や複雑な設定が少なく、平均点も高かった。その反動で来年はより「共通テストっぽい試験」に回帰して平均点は下がると予想する予備校関係者も多い。
教科書等で扱われていない初見対応力が必要な試験は果たして適切なのか?と批判する教育関係者も多いようだが、Z世代の受験生は答えが一つではない時代に生きていなかなければならない。複数の資料を読み解き、論理的思考に基づき考察させる思考力問題。教える側も対策しにくいので苦労するが、何とか生徒と一緒に乗り越えていきたい!