ある国際派の絶望と使命感
新聞の教育特集で「生きた英語、学びに影」というコラムを読んだ。各国で出入国制限が敷かれ国際間の行き来ができなくなったため、日本の学生は海外留学への道を閉ざされ、海外から人材を招聘していた教育機関もネイティブ教師の人材不足に苦しむ状態が続いている。
もし、講師が今18歳の受験生だったとしたら、絶望的な気持ちでいただろう。地方から東京の大学へ進み、世界へ飛び出すことだけを夢見ていたのだから。公立伝統校のケンブリッジ大学研修に約3倍の倍率を突破し選抜されていた高2の塾生さんも残念ながら3月の渡英が中止となった。志望エッセイや研修準備に一生懸命頑張っていた彼女の気持ちを考えるとひたすら無念である。
新しい大学入試に向け英語塾を始めるきっかけとなったのは、大学入学共通テストにおける英語の変革が大きい。センター英語のいわゆる「お受験英語」問題の廃止、リスニング・長文速読重視の実用英語の導入により、従来の集団授業での単元別インプット座学が通用しない試験内容となったからである。
今年の3月、TOEIC満点89回という実力派講師が東進を辞めYouTubeで英語を教え始めた「残念ながら学校の教師も予備校の講師も英語が使えない人が多い。スポーツでいうとルールブックには詳しいが、実際自分ではプレイできない人ばかりだ」と英語教育界の現状を嘆いている。
講師も同様の問題意識を持って「地方と都会の英語教育格差を無くす!」ことを理念に掲げ、岡山で少数精鋭の受験英語塾を始動した。今後若い英語教師がどんどん世界に出て生の英語を吸収し、日本に帰って地元の若者を教えて欲しいとの願いも新型コロナウイルスの感染拡大による世界規模の国境封鎖により先が見通せなくなってしまった。
幸運にも高校、大学、大学院と奨学金を得ての留学、3度のアメリカ駐在で通算20年以上ネイティブ生活を体験することができた私はWithコロナの時代においては絶滅危惧種のような存在かもしれない。夢を実現するのが困難になった若い世代の無念な気持ちも背負い、集ってくれる生徒さんの目標実現に少しでも役立てればと思う日々である。