2021年度入試の最新動向(国公立・私立大編)
新型コロナウイルスの感染拡大で不透明な21年度入試だが、大手予備校の模試が本格化し、実像が徐々に見えてきた。駿台教育研究所は「東大など難関国立大の志望者はコロナ禍でも逃げず、志望者は減っていません。私立大も慶応大などの志望者が増えています。一方、国公立大は準難関大が減少し、地方の比較的難易度が低い大学が増加しています。受験者が2極化する分かれ目が下がっていると感じます」と分析する。
減ると予想されていた都市部の難関大の志願者が減らず、増えるとみられていた中堅大の志望者が伸びていない。強気を貫く受験生がいる一方、弱気な受験生はより安全志向に傾いているようだ。
学部志望動向を見ると、減少基調にあった文系学部は減少が顕著になった。コロナ禍で将来の就職状況が厳しくなることへの警戒感からだと見られる。一方、理系学部の志望状況は堅調だ。理系学部の志望状況をさらに細かな系統に絞ってみると、増えているのは情報系だ。理、工、総合科学系に学科が設置されているが、特に総合科学系の人気が高いようだ。ベネッセ教育情報センターは「情報化社会の進展に伴い、国公立大では、データサイエンスを学ぶ総合科学系で志望者が大きく増えています。理学系の情報科学、工学系の情報工学の志望者も増えており、私立大も同様の傾向が見られます」と語る。
入試改革の目玉である大学入学共通テストの開始、1次選抜に利用する国公立大学が主役であることは間違いないが、同様に共通テスト利用で一般選抜の方式をがらりと変える私立大がある。東進ハイスクールが早稲田大を例に説明する「早稲田大は共通テストの数IAを必須とする政治経済学部、国際教養学部などで3教科型の私立大専願者を中心に志望者が減っています。ただ、国公立大志望者が併願しやすくなるので、最終的な出願状況は流動的です」
上智大も早稲田大と同様に共通テストと独自試験を組み合わせる方式に変える。ベネッセ教育情報センターは「上智大は新規に共通テストを導入しますが、共通テストのみの方式、共通テストと独自試験を併用する方式、共に志望者は集まっていません」という。メインの入試を前述の2大学と同様の方式に変更する青山学院大学も、共テ利用の一般方式の志望者が減少。しかし、共通テストのみの成績で合否判定する方式の志望者は減っていないようだ「私立大の志望状況を見ると、一般方式は減っているが、共テ利用方式は大きく増えています。各大学の試験場に行く必要がない方式で増えているのは、新型コロナウイルスへの感染リスクを避けたい、受験生心理の表れと見ています」
移動を敬遠する受験生の動きは地区別の私立大志望状況にも表れている。河合塾教育情報部は「国公立・私立大を問わず、コロナの影響で地元大学を志望する地元志向が強まっています」と指摘する。「意外にも国公立・私立大共に志願者が増えているのが芸術系だ。中でも人気が高いのはAR(拡張現実)やVR(仮想現実)の技術を用い映像などを扱う分野。学校の一斉休校時の在宅学習などを通じて、情報技術が身近になったことの表れだろう」のこと。入試改革やコロナの影響で受験生の志望動向も揺れ動いている。最新の情報をフォローすることが大切になるだろう。