共通テストが測りたい学力とは?
初めての共通テスト「第1日程」「第2日程」とも無事に終了した。昨年約40年の歴史に幕を閉じたセンター試験以上に思考力・判断力を問う出題方針の下、複数の資料から情報を読み取らせる問題や日常場面を題材にした問題が増えたが、こうした出題傾向への評価は分かれる。以下に日経新聞の論説をまとめる。
「問題を解くことよりも読むことで疲れた」「設問に当てはまる情報を探す作業がほぼ全ての設問で手間がかかった」進学校として名の通る都立高校の共通テストを受験した生徒達の感想は出題の特徴を物語っている。読解に時間がかかるものの問い自体は易しい問題も多かったようで、900点満点の平均点は「前年並み」に落ち着いた。
試験問題のページ数をみると英語リーディングや数学はセンター試験より増え、教科によって濃淡はあるが、全体として問題文中の資料や図が増えた。日常生活や授業など学校での活動場面を想定した設問が目立った。例えば、センター試験からの変化が最も大きかった英語リーディングではスマホ上でのチャットのやり取りを読ませ、数IAでは100M走を2次関数を用いて考察させた。
高校教員や予備校関係者の感想で多く聞かれたのが「情報処理能力」やそれに類する言葉だ。代ゼミ外国語研究室は「問われている力は情報処理力が中心。問題量は多いので、必要な情報を拾い読みして効率良く解答できた受験生は高得点に繋がったのではないか」とみる。数学科教諭は「情報処理戦というか、設定を読んでパパっと処理していく力が求められた」と話す。
果たしてこうした能力が共通テストで測るべき「思考力」なのだろうか?テスト理論が専門の南風原・東京大名誉教授は「測りたい能力を明確にしないまま複数資料の提示や日常場面の設定が目的化しており、作問ポリシーが迷走している」と指摘する「正答するために必要なのは複数の資料から得た情報を頭の中に一時的に保持しておく力。その上でそれらの情報を比較、取捨選択する処理が求められる。それは思考といえば思考だが、本当に問いたい力なのか?吟味が必要だ」
一方、駿台教育研究所は「今の社会は情報にあふれている。SNSサイトを流れる情報の中から取捨選択する力などは、ボリュームゾーンの学生にとってこれから一番必要な力では?それを端的に問うているのが英語の問題だ」と今回の出題内容を評価する。駿台の意見の前提には大学の大衆化がある「一部の難関大学を除いて、これからは難しい論文を読む力ではなく、最低限の力を確認して入学させ、得意分野を伸ばすことが必要」とする。
共通テストの問題は高大接続を目標に高校の授業改善を促すことを意識して作らている。だが入試は大学での学習に必要な力ほ有無を見極めるのが本来の目的だ。そうした目的に照らして妥当な出題内容と言えるのかまだ検討を要するだろう。英語については、より大学での学びに近い内容の文章を「速く正確に読み解く力」測ろうとしていると確信しました。正しいベクトルで生徒さんの英語力を本物にしていく所存です!