2024年度国公立医学科の入試変更点
新課程入試を翌年に控えた今年の入試は「後がない入試」と言われるが、メジャーな入試改革を目前にしながら各大学の定員・個別試験などの変更も驚くほど多い。昨年の受験生は東大・京大を始めとする旧帝大志望が多かったが、今年から再び国公立医学科志望者がメインの学年が高1生まで続く。今回は8月時点で判明している医学科の変更点を影響のありそうな順に取り上げてみたい。
◎定員の変更
★信州医:前期定員の減員・全国募集地域枠の増員
地方国立医学科では最多の95名採っていた前期一般選抜の定員を85名へ10名減らす代わりに学校推薦型選抜は長野県地元出身者枠13名と全国募集地域枠22名合わせて35名まで10名増員する。1浪まで対象の全国募集地域枠は1高校につき1名のみ推薦可で合格すると長野県から岡山医地域枠と同じ国内最高の修学資金1440万円が貸与され、卒後9年間県内勤務義務を果たせば返済が免除される(但し臨時増員枠で増員が認められた場合)。
★金沢医:前期定員の減員
前期一般選抜の定員を82名へ2名減員。期限切れ後、延長扱いとなっている臨時増員枠の打ち切りを意識してか?一昨年3名減員した岡山医など国立医学科は少しずつ前期・後期一般選抜を中心に定員を減らしてきている。
★滋賀医:地域枠定員の増員・全国枠定員の減員
前期一般選抜で全国枠を53名へ2名減らす代わりに地域医療枠を7名へ2名増やす、学校推薦型選抜でも全国枠を26名へ3名減らす代わりに地域枠を9名へ3名増やす。合計5名地域枠が増え滋賀県内の高校生にとっては朗報(但し臨時増員枠で増員が認められた場合) 。
★鳥取医:前期定員(鳥取県枠)の減員
前期一般選抜58名のうち鳥取県枠は12名へ2名減員される。物理の出題ミスで定員より7名多い追加合格をさせた影響か?大学によるミスのしわ寄せを被る鳥取県の地元生はかわいそうだ。
★長崎医:前期定員の増員・グローバル研究医枠の減員
学校推薦型選抜(グローバル研究医枠)を5名減員する代わりに前期一般選抜の定員を76名へ5名増員。地元青雲中高(今春27名合格)の推薦合格者独占を阻む目的か?
◎入試制度の変更
★岡山医:英語資格検定スコアの利用
CEFRのC1(英検だと1級1次合格)レベルのスコア任意提出で医学科の共テ+個別英語で500点満点換算される。2次英語の採点が厳しい医学科ではかなりのアドバンテージとなり全国から理数科目もできるC1取得者(対策塾が充実する都会で取得者が多いIELTS、TOEFL-ibt、英検1級など)が攻めてくる可能性がある。加えて旧課程最終年の今年は浪人を避けたい上位層が安全策で落としてくるケースが多くなり、例年以上に最後まで合否が読めない戦いとなるだろう(共通テスト導入前、最後のセンター試験だった2020年度は灘高校から岡山医へ3名合格してきていた)。
★奈良県立医大:前期選抜の配点及び2次試験科目変更
医学科らしいトリアージ試験が名物だったが、2次学科試験を廃止して共通テスト900点+小論文(100点)となる。共通テスト比率90%と前期選抜で最高だった徳島医の69%を超え、全国から共テ高得点が取れた逃げ切り組が集まるだろう(但し理科2科目が300点へ1.5倍される分、国語を半分の100点に圧縮する傾斜配点)。前期定員は22名と少ないが、関西圏から徳島医まで降りてくる人は減りそうだ。
★山形医:2次試験の国語を除外
東大理3、京都医、名古屋医などトップ医学科と並び、2次試験に国語(現代文のみ)が課されていた山形医は国語を廃止し、英・数・理の典型的な3教科入試に変わる。国語が廃止された分2次英語の配点が倍増される。
★山梨医:2次試験で英語を追加
東大理3・東京医科歯科大など首都圏の最難関医学科で前期落ちした人の受け皿として知られ後期募集だけの山梨医の2次は全国の医学科で唯一、数学・理科のみだったが英語が追加される。よほど採点が甘いのか?共テ:2次=900:2300の計3100点満点と全国で最も配点の多い医学科だ。 面接試験も集団面接から集団討論形式に変更されたことで受験生の負担増となるだろう。
★岐阜医:2段階選抜倍率の厳格化
2段階選抜の予告倍率が9倍と寛容で毎年高倍率だった岐阜医前期の足切りが3倍まで縮小される。2次面接がある医学科の場合、受験者数が多過ぎると大学側の負担が大きい。今年の岡山医(4倍→3倍)、広島医(7倍→5倍)と足切り倍率の引き締めが続いており、足切りを突破するためにも共テは失敗できない。
★愛媛医:R:L配点比率の変更
愛媛医はR:Lの配点比率が9:1と最もリーディング比率が高く、全国からリスニングで苦戦する受験生にのっては頼みの綱だったが、センター水準の4:1へ回帰し、昨年度推薦入試で首席合格した塾生が大量得点したリーディング1.8倍のボーナス配点は圧縮される。
★高知医:国際バカロレア入試導入
中四国の医学科では岡山大・広島大・香川大に続き4校目の国際バカロレア(IB)入試(若干名)を導入する。入試の詳細は未だ明らかにされていないが、IB入試は国立医学科でも異常な拡がりを見せており、中四国でもAICJに続き朝日塾中教、倉吉東など私立・公立高共にIB課程導入が相次ぐのも理解できる。
国公立医学科で唯一 2次に英語が無かった山梨医、 2次でも国語を課していた山形医が英・数・理3科目入試へ変更、名物だった奈良県立医の前期トリアージ試験が廃止される(推薦入試(地域枠・緊急医師確保枠)では残る)。2025年度には2次試験で数3を出題しない英語ベースの総合問題300点だった弘前医も以前の英・数の2科目入試に戻すらしい。数学に不安がある英語強者が狙えた総合問題もわずか4年間のお試しだった。いわゆる尖った入試が一般化されていく流れだ。
大学入学共通テストの導入、12年毎の学習指導要領改訂による入試科目の組み換えなど目まぐるしく変化しており、まさに大学入試は「情報戦」だと実感する。特に理系上位層が全力で目指してくる医学科入試では変化にいかに対応できるかが合否を左右することが多い。30年余り続いたセンター試験から共通テストに切り替わった21年度の過去問がない戦いも勝ち抜き「変化に強い」塾だと自負している。今後も得意のデータ分析力を活かし塾生に最新情報を伝えていきたい。