今年の共通テストはそんなに易化していなかった!?
世の中には私のような統計オタクの方もおられるようで、或る塾の代表がかなり深く第3回共通テストの得点データを分析しておられた。検証させていただいた結果、同意できる視点が多かったので紹介したい。
◎かなり得点差がつく科目があった
得点の散らばりは得点分布の標準偏差でわかるが、次の科目は20を超えていた
物理22.7>英語R21>化学20.7>数学IIB20.2
得点調整の加点後でも平均点48点台半ばと2年連続で過去最低を更新した生物選択と比べて物理選択が有利だったのは確かだが、物理、化学は満点近く取れた人とその下のレベルで分断が見られる。一方、最低平均点を更新した生物の標準偏差は17.4しかなかったので大半の人が得点できておらず、文系科目が苦手な人が多い理系の中で難化した英語・国語の400点を死守できたか否かで総合点の差がついただろう。中四国の国立大は広大が1:1の英語L重視なのを除き、4:1配点なので英語Rの平均点-8点は1.6倍の-13点で影響が大きい。
◎全体的にもかなり差がついた総合点分布となっている
駿台データネットの自己採点データによる平均点が約6割だったことから、難易度は共テ初年度なった2021年度と難化した2022年度の中間レベルだったと言える。しかし中央値(550点)に注目すると今回2023年度の山が最も低く、しかもなだらかで幅広い。標準偏差が大きくなっており高得点の層と低得点の層に二極化されている。平均点では易化したように見えるが、両極端が増えており差がつきやすい問題だったようだ。
◎2021年度から2023年度の3年間の河合塾50%合格可能性共テ得点率ボーダー推移でも上位校と下位校の差が激しい(国立医学科のケース)
★ 旧帝医学科レベルの最難関大学は初年度の水準までほぼ戻している
京都医:90%→85%→89%(初年度から-1%)
東京医科歯科: 90%→84%→89%(-1%)
九州医:87%→81%→86% (-1%)
★中堅国立・単科医大ではマイナス3%まで戻している
筑波医:86%→81%→83% (-3%)
浜松医:83%→77%→80% (-3%)
★下位地方医学科ではマイナス5%~4%までしか回復できずにいる
(九州の最後の砦、大分医は高倍率で志願者の半数近くが足切りされた)
鳥取医:82%→75%→78% (-4%)
高知医:82%→75%→78% (-4%)
大分医:83%→76%→78% (-5%)
2年前の第1回と今年の第3回共通テストを比較すると全体の平均点は2%位しか下がっていないが、中央値は2年前の610点から550点まで7%程下がっている。これは平均点上昇にも係わらず思ったほど得点できていない層が増え、差がついていることを示唆する。これらのデータからまとめると次のことが言えよう。
★第3回共通テストは標準偏差が大きく得点分布の分散度合いが大きい
★平均点が上がった割に各科目差がついており易化したとは言えない
★最難関大とその下のランクの大学との得点差が更に拡がっている
原因としては、情報処理能力を重視する共通テストの出題傾向、及び公立の現役生が共通テストに対応する時間的余裕がなかったことが挙げられる。地頭に長けた東大などの最難関大志望者は苦にしなかったように最上位層が得点の差を拡げたようだ。また共通テスト専用の対応がより必要となる中、先取り学習をする私立中高一貫校と公立校との演習時間の差が得点に表れたと言える。
共通テスト開始後2年間の東大・国公立医学科合格者数でも私立中高一貫校がランキング上位を占める状況となっており、高2までに高校の履修範囲を完了し、高3では共通テスト対策や2次演習に専念できる先取りカリキュラムの優位性が点数差に表れている。高得点が取りづらく差がつくのが共通テストの特徴なので、当塾では高1・高2の早期から共通テストへの意識付けをしている。高1から目標にしてきた高2共テ模試デビュー戦では塾生の英語傾斜配点97%で全国偏差値が89も出ていた。まだまだ出遅れている受験生が多いようだ。