今後の大学入学共通テストの展望
大学入学共通テストも今春で3回目を終えた。30年余りの歴史を終えた2020年の最後のセンター試験からの出題傾向、難易度の輪廻が繰り返されるとすれば、今年度以降の展開は次のように予想されよう。
2024年度(現高3生受験):
20年度のセンター最終試験でも英語や数学で新傾向の出題がされて平均点が下がった。現行の学習指導要領下で最後となる今年度の共通テストでも新課程への「橋渡し的な出題」がされる可能性があるので、大学入試センターが試作したサンプル問題(直近の東進共テ模試で出題)も解いておくなど新課程を意識しておいた方がよいだろう。共通テストへの外部評価で難易度が「適切でない」と最低評価の(1)がついた生物については、今春の数学と同様に難度が平常化されるだろう。22年度に平均点が大幅に低下した数学も外部評価が下から2番目の(2)で翌年23年度は誘導をつけてくれて解き易くなっていた。
2025年度(現高2生受験):
2021年度の第1回共通テストでは30年振りの入試改革ということもあってか、やや難易度が抑えられた。現高2生が受験する2024年度も新設される「情報I」現代社会に代わる新科目「公共」を始め総合科目で再編される社会科、数3分野が降りてくる数学2BC、実用的な文章が追加される国語など変化が激しい。しかしながら「新課程の初年度は易しめになる」という傾向が踏襲されれば21年と同様に高得点勝負となる可能性がある。悩ましいのは浪人した人だ。1年限りの「経過措置」で数学IIB(但し問題増で70分に延長)、地歴・公民は旧課程の問題を選択できるが、過去の経過措置問題の難易度は新課程問題よりやや高かった。新課程で受けておいた方が点数が出たなんてこともあるので、やはり浪人すると色々面倒になるだろう。
2026年度(現高1生受験):
22年度の第2回共通テストでは、平均点が20点近く下がった数学に加えて理科でも生物・化学で平均点が最低を記録するなど難化した。現高1生が受験する新課程2年目の共通テストも抑え目だった初年度から一転して手強い問題をぶつけられ荒れるかもしれない。大学入試センターの作問委員の任期が終わる2年目はやりたかった問題を出し尽くして去っていくので難易度が上がりやすい(本年24年度も2代目作問委員の任期最後の年)。
共通テストの英語はセンター英語より格段に分量が多くなり、大量の問題を短時間で処理できる「情報処理能力」の高さが問われる「知識を使って思考する、判断する力」をウェブサイト、ブログなど実際に使われている様々なテキストを用いて測ることを意図した出題がされている。英語長文の要点を早く正確に把握する力や必要な情報を効率的に検索する力を使って、従来の内容一致問題に加えて「事実と意見を区別する問題」「本文と図表の情報を照らし合わせて解答する問題」「読み取った情報から推測する問題」など多彩な問題を解くことを求められている。
東大文1に合格した塾生が在籍した東進の東大特進クラスの共通テスト得点を見て唖然とした。共テ配点割合が2割と最も低い東大に合格した人達が余裕で9割以上をたたき出す一方、共テ比率が6割以上ある地方国立医学科の最低合格ボーダーは8割以下まで下がり、共テで合否が決まる人たちほど苦戦している状況には複雑な心境だ。東大合格者は都会の熾烈な中学受験で点数競争を勝ち抜いた情報処理能力が高い人が多いのでスピード重視の共通テストと相性がいいのは理解できるが、大学入試改革で最上位層とその下の上位層の間でも格差が更に拡がっている。
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類になったことに伴い、マスク着用不要、及び全47都道府県に設置していた大学入学共通テストの1週間後にある追試験の会場を全国2カ所の形に戻すと文科省は発表した。東日本では東京外国語大学、西日本では京都工芸繊維大学が会場となるが、時間の限られる地方の受験生には長距離移動が要され本試より難易度もやや高くなる追試は負担となるので、くれぐれも新型コロナやインフルエンザ感染しないよう油断しないで欲しいと願っている。