岡山大学の英語資格検定試験C1レベル利用の衝撃
岡山大学が2024年度入学者選抜要項で「CEFRのC1レベル以上(英検で1級レベル)で共通テスト英語及び2次試験の英語の両方を満点にみなす」と正式に発表した。2次試験の採点が厳しく合格者でも英語400点満点中300点以上取れた人は少ないといわれる最難関の医学科などでは圧倒的に有利になる。しかも「英検だけでなく」当塾でも利用するTOEIC、GTEC、TEAP、TOEFL及び英国系のIELTS、ケンブリッジ英検なども対象となり、全国にはいずれかの試験でC1レベル取得済みの受験生が東京など都市部の帰国子女を中心に相当数いる可能性がある。
但し、岡山大は広島大や鹿児島大の英検準1級合格で共通テストみなし満点のような「級の合否」ではなく、C1レベル以上(C2が計測できるのはIELTSとケンブリッジ英検のみ)の「得点基準」なので★英検1級なら最終不合格でも、1次筆記が合格し2次面接試験も受けてCSEスコアが2600点超えれば1次+2次英語が医学科では500点みなし満点される(準1級では満点でも2599点まで)。次に検定試験を利用する際の留意点をまとめると、
★検定試験の成績は2022年4月以降に受験したもの、受験年の直近2年前の4月以降に受験した最新の成績しか対象にならない。
★大学入学共通テストの英語を受験していない場合は岡山大の出願資格が満たさない(検定試験の成績活用が認められなかった場合、科目不足により受験資格が失われる。共テ英語は無視できないが、2次英語はノー勉でいいので理数科目に時間を回せるのは大きい)
★検定試験利用を希望する場合は一般選抜出願までに検定試験のC1レベルの成績を取得(英検では10月第2回試験がラストチャンス)、出願時に志願票とC1レベル取得したことがわかる検定試験成績証明書等を郵送。
★大学側が提出された書類を確認し「英語検定試験の活用を認める旨の通知」が書留で返送される。なお1次試験が不合格で2次試験を受験せず4技能が測れていない成績証明書は受理されない(S-CBTでコンピューター受験できるのは英検準1級まで)。
★検定試験の活用が認められた場合、2次試験の英語は免除される。当日受験不可なので理系の場合、英語の次の理科から参加する。
現行方式(2024年度からリニューアル予定)の英検1級の1次試験合格基準点はリーディング・リスニング・ライティング各850点満点の合計スコアが2028点なので、最終合格(2630点)しなくても2次の面接スピーキングでもかなり頑張らないとC1の2600点に到達せず、ハードルは高い。
現実的には英検1級などC1レベルの検定試験で岡山大を狙うのは最難関の医学科受験者でもコスパが悪く、オーバーワーク(他の教科をやる時間を取られる)なので数学・理科が仕上がっている人にしかお薦めしない。もし本気で英検1級レベルを目指すなら、小学6年までに2級、中学で準1級、高2で1級合格といった長期にわたる計画が必要となるだろう。医学部受験界隈では今年から岡山大医学科は英検1級ゲームだと騒いでいるが、理系の帰国子女ならTOEFL-ibtの方がはるかにタイパがいいだろう。7月から3時間超の試験時間が2時間へ短縮され、英検1級のようなムダにムズイ単語記憶に時間を割く必要がなく、地の英語力で95点(C1)は楽にクリアできる(但し英作文がタイピング入力なので純ジャパの生徒にはきつい)。
今年からは英検を始め様々な英語検定試験でC1をクリアした日本中の医学科受験生が攻めてくるだろう。共テ自己採点のリサーチ判定では見えないステルス攻撃となるが、岡山大2次試験1時限目の英語を共テ合わせて500/1600点みなし満点で免除された受験者が次の理科の試験から途中参戦してくるというメンタルに良くない状況を作る岡山大は、C1持ちでない受験者への配慮はしないのか?今年は現行課程最後の入試となり上位医学科レベルから落としてくる人も多くなりそうで、岡山大医学科は例年以上に最後までどうなるかわからない激戦になりそうだ。
2016年頃から英作文の配点割合が上がり、2020年頃から長文読解の語彙レベルが下がり、パターン対策が有効なこともあり英検利用はコスパの良い受験戦略だったが、2024年から英作文・スピーキングの難化が予定されている。TOEICも最近の難化傾向で高得点が取れないので、受験生の人生を左右する大学入試に利用される英語検定試験としてはバランスがとれてきている。しかし、1級の2次試験受験地は全国11都道府県しかなく、地元岡山県の生徒も広島市まで行かねばならない「受験生間の格差(都市部が有利)の問題」で共通テストに導入が見送られた民間検定試験を地方国立の岡山大が重視し過ぎるルール変更には違和感を抱かざるを得ない。