情報の追加で国語ゲームが薄まる国公立医学科入試
理数科目が得意な理系くんらにとって共通テストで200点配点される国語及び100点配点の社会の出来が理系最難関の国立医学科の合否にはかなり影響する。例えば、某医学科に出願するのに750点は必要だとして、国語で6割、地理で6割しか取れないと残り780点となり、英・数・理の3科目でわずか30点しか失点できなくなる。現時点の公表分で文系科目が得意な人用に配点の高い医学科、逆に苦手な人用に配点の低い医学科を挙げると、
★共テ+2次合計で国語・社会の配点比率が高い国公立医学科:
島根医:25.9%、滋賀医:25%、佐賀医:22.6%、香川医:21.4%、
東大理3:21.2%、弘前医・京都医・山口医・宮崎医・奈良県医:20%
東大・京大は2次記述にも国語があるので理解できるが、中四国の島根医は社会人経験を積んだ再受験生に大人気、佐賀医は文系科目が得意な女子の合格者占有率が22年度は全国一の5割だった(特に通学圏内にある九州トップの久留米大附設女子に人気)。
★共テ+2次合計で国語・社会の配点比率が低い国公立医学科:
新潟医:7.7%、東北医:8.3%、金沢医・大阪医:10%、
千葉医・大阪公立医:10.3%、東京医科歯科・広島医:11.1%
共テ国語と社会が半分に圧縮される新潟医には文系科目が苦手だが、2次力に自信を持つ数学強者が集まる。英・数・理の理系3科目型の私立医大入試と親和性が高いので東京慈恵会医大・日本医大など私立御三家との併願者が多く、旧六の名門医大(地元トップの新潟高校理数科から20名以上合格)にも係わらず毎年首都圏在住者の辞退が出るのも特徴だ。今春は岡山県からも1名が新潟医に合格していた。東大理3と東京医科歯科大との選択、京大医学科と阪大医学科との選択は国語を苦にするか否かで決める人もいるだろう。
また、2025年度入試から導入される新たな科目「情報」は非常に重要な変数となる。全く新しい対策をしなければならないし、それをサポートする専門の教員数も足らず十分対応できている高校は全国を通して少ない。情報Iの共通テストに占める配点割合が高い医学科および低い医学科を現時点での公表ベースで挙げると、
★共テでの情報I配点が高い国公立医学科:
熊本医:11.1%、東京医科歯科・福井医・広島医・大分医・宮崎医・琉球医・京都府医:10%(素点通りの配点)、東北医・京都医・岡山医:9.1%
東北医、東京医科歯科、広島医では情報Iの追加によって理系科目の配点がより強まる見込み。情報Iの配点が高い医学科を目指す受験生は手を抜くことはできないが、国語が苦手な理系科目専門の人などには朗報だろう。逆に理系科目の割合が増える文系科目が得意な人には医学科合格の壁になるかもしれない。
★ 共テでの情報I配点が低い国公立医学科:
北海道医・香川医・徳島医:0%、佐賀医:1.6%、鹿児島医:2.7%、長崎医:3.2%、旭川医:3.5%、弘前医:4.8%
情報Iを配点しない香川医(総合点が同点の場合、情報Iの得点で順位決定)や1.6%しか配点しない佐賀医では国語ゲームが続くだろう。九州地区の8医学科で情報重視の4大学(熊本・大分・宮崎・琉球)と重視しない3大学(佐賀・鹿児島・長崎)の2グループにはっきり分かれたのは興味深い。
元々、国公立医学科では1次・2次、各科目間、英語のリーディング・リスニングの配点比率、理科(物理指定)や社会(現社OKやA科目OKなど)の選択科目等とにかく変数が多く、受験生の最後の出願校選びには多面的なデータ分析が必要となる。理系上位層が1点争う勝負をする国公立医学科受験にはそれらの情報を徹底解析できる進路指導部や大学受験塾のサポートが必要となってくるだろう。