今年の国公立医学科入試も壮絶な戦いだった
国公立医学部医学科の受験者数は2012年~14年頃に情報系など旧帝大の理工系学部に上位層が流れて減少傾向が見られる時期もあったが、コロナ禍における医療への関心と地元志向の高まりが医学科志向を押し上げた。実際2024年度も国公立医学科の前期志願倍率は昨年の4.44倍から4.47倍へ上昇していた。今年の国公立大学全学部の前期平均倍率は2.89倍で、少子化で共通テストの受験者数が2万人近く減ったにも係わらず医学科の志願者は増えていたので人気は健在だと言えよう。なお、今年度の国立医学科入試では下記のような波乱要素も多かった。
◎上位国公立医学科での欠員発生
岡山大医学科地域枠コース、広島枠・兵庫県枠(各2名)では1名~2名欠員になることはあったが、定員4名採っていた地元岡山県枠で1名しか合格者を出さず、該当者無しだった広島県枠、1名だけの兵庫県枠と合わせて6名もの欠員補充第2次募集を3月末に行った。また、今年から国公立50大学の医学科の中で9割と最も高い共テ比率に変更した奈良県立医大前期(22名)も12名も欠員を出し2次募集をすることになった。高い共テ基準点(後に765点(85%)と判明)を公表してなかったのも欠員の要因だと思われる。大学側としては無理して基準点以下の学生を採るより「後期で復活できなかった京医・阪医落ちなどの優秀な学生を採ろう」と方向転換したのだろう。両大学の欠員も共テの得点が合否に大きく影響するので、優秀な学生の採用基準として医学部側が思考力問題となった共通テストに信頼を置き始めているとも言えよう。
◎各国立大2次試験での物理の難化
今年は岡大・広大など中四国を始め多くの地方国立大学で物理が難化したようだ。2022年・23年と共テ生物が最低平均点を更新する難化を見せ、多くの生物選択者が浪人したが、共通テストでの物理と生物の得点差を2次理科で調整してくれているとすれば国立大学側の配慮がうかがえる。マークで上手くいった物理を先に解いて余った時間を化学に回す戦略が裏目に出て、物理で沼って化学の取れる問題を解き切れなかった人が多かったのではないだろうか。そうであればこれまで生物が不利過ぎたのでよりフェアな傾向だと思う。事実、各国立医学科の合格者に占める生物選択の割合は高校での生物選択者が激減している中、鳥取医(36%)、香川医(31%)、高知医(28%)と高かった。高よびさんが昨年より前期入試で健闘していたが、共通テストでの生物不利で滞留していた浪人生の皆さんが今年は報われたのではないだろうか。
◎都会の中高一貫校から地方国立医学科にランクダウン
最後の旧課程入試で決めたい関東・関西の有名中高一貫校から中四国の国立大医学科にも容赦なく落としてきた。主な有名校は次の通り、
徳島医:甲陽4名、灘・洛南3名、学芸大附属・洛星1名
香川医:開成・海城・市川・筑波大附属各現役1名
高知医:洛南2名、灘・洛星1名
愛媛医:洛南2名、開成・学芸大附属・西大和1名
島根医:聖光・浅野・学芸大附属・洛星1名
徳島医には甲陽学院から4名、灘・洛南から3名ずつなど旧課程最後の入試で全国の進学校の強豪たちが容赦なく志望を落としてきて四国の国立医学科は3大学で足切りが500名近く出るなど24年度入試は壮絶なバトルとなった。徳島医などは推薦以外で現役合格した県内生を聞かないくらい全国から攻められていた。岡大医学科も旧帝医学科を目指していた人が旧課程ラストの今年で決めるため降りてきたことに加え、英語C1みなし満点認定者16名の参入、数学・物理の難化と変数が多かった。そんな逆風の中でも県内上位校のトップ層など飛びぬけた層は順当に現役合格したようだが、例年現役と同数程度だった浪人生があまり復活できていなかったのはかわいそうだった。医学科は理系最難関なので近年は地方でも受かりやすい大学を選ぶ都会の進学校の受験生がすごく増えている。そんな全国乱れ打ちの動きが地方国公立医学科の競争を更に激化させている。
できるようになる子と伸びない子の差は、自分に必要なことは何かと考えて行動しているかどうかの差だと思う。1週間のうち数時間だけ塾に通わせて何かが劇的に変わることはまずないだろう。自学自習の時間の方がどれほど大事なことか。本人がやらないとできるようにならないのが勉強の本質であって、学校の教師や塾の講師はナビすることしかできない。でも過酷な受験の最前線で生徒さんが成し遂げた奇跡を一緒に喜ぶことができる。その瞬間を楽しみに今年も現役合格への水先案内人として共に寄り添っていきたい。速読、リスニング用に過去問演習する位で特に英検対策はしていないが、20年ぶりに新形式に変わった先月の第1回英検で初の1級、9人目の準1級一次合格者を出すことができた!これも自分の志望校合格に向け必死に頑張っている生徒さん自身の努力の賜物だ。