2024国公立医学科への合格力(中四国編)
国公立医学科現役合格率ランキングでトップ30入りした中四国の高校は、9位の愛光が13.6%(現役合格30名)、12位の徳島文理が11.7%(13名) 、17位の広島学院が10.5%(19名) の3校が10%を超え、続いて大安寺中教(13名)が8.7%で25位、済美平成中教(9名)が8%で26位と全て少人数制の中高一貫校だった。高校の真の合格力は予備校が仕上げてくれた浪人を加えた合計ではなく現役合格率で評価すべきだと考える。旧課程入試最後の24年度は甲陽学院から4名、灘から3名が徳島医へ、開成や筑波大附属から現役で香川医へ合格してきたり、全国を股にかけた乱れ打ちの壮絶な戦いで、四国の3大学だけで400名半ばの共テ足切り退場者が出た。
愛光はとにかく医学科に強い。現浪合計で中四国の多くの有力高が減らす中64名と前年比4名増加、地域枠もフルに利用し地元愛媛医で22名稼いだのが大きい。東大理3へ浪人3名、大阪医3名、九州医2名、東北医と旧帝医学科(岡山県全体で7名)にも9名合格。続いて広島学院は、広島市の中高一貫が総じて不振な中で合計33名、広島医13名で全国最多の他、東大理3、京都医3名、大阪医2名、東北医、神戸医に合格と充実していた。徳島文理は生徒数110名と小規模な私立中高一貫校だ。東進全国統一高校生テスト全国大会出場、大学への数学の学力コンクールの上位が東大理3へ現役合格する人の登竜門となっているが、東大理3合格の岡山白陵男子と一緒に掲載されていた首席女子が理3&慶応医ダブル合格していた。共テ9割取った女子も定員10名の神戸医総合型で合格、上位男子2名も旧六医大の岡山医(英検1級でC1英語みなし満点)、新潟医に現役合格していた。徳島医の地域枠も1高校の枠5名全員(計9名)合格させ、現役合格率は愛光に続き中四国2位、全国12位まで浮上していた。
広島では男子校の広島学院が前年比6名増の33名へ増やし、県立広島も昨年の国医合格2名から10名へ復活させた。備後地区トップの広大福山は稼ぎ頭の広島医が前年の6名から半減したが、昨年の32名から34名へ増やし九州の医学科の後期合格や岡山医地域枠2次募集で前期から5名も追加して終盤でもの凄い底力を見せた。一方、 共学トップの広大附属は昨年の21名から22名へ1名増やしたものの現役合格が10名のみで低迷が続いている。驚きは女子校トップND清心女子の不振だ。昨年の国医16名から10名まで減らしたが、中四国No.1女子校から地元広島医に合格者ゼロだったのは記憶にない。岡大医学科と同様に広大医学科も2次試験が難化した上「新課程入試に変わる翌年まで勝負を持ち越したくない」旧帝医レベルを目指していた人たちが落としきたのが要因だろう。珍しく九州トップの久留米大附設が3名も理科重視配点がある広島医に合格させてきていた。
全国50の国公立医学科の内、愛光は岡山医6名など18校に幅広く合格させており生徒に合った出願戦略が功を奏したのでは。 愛光に次ぐ2番手の済美平成が4名から12名に3倍増させたが、名古屋医、東北医1名ずつ、岡山医にも2名現役合格させ、現役合格率も7.9%で全国26位と健闘。愛光に次ぐ2番手も伸ばし、愛媛の私立中高一貫校が強さを見せつけた。高知の名門土佐高も北海道医、名古屋医、京都医各1名と3名の旧帝医学科を出し昨年21名から27名に回復していた。
中四国の公立高校では地元香川医に17名集中合格させた高松(37名)が国公立医学科合格者数では全国21位と復活し、中四国の国医合格者公立高トップを2位の岡山朝日(29名)から奪還した。岡山医に集中した岡山朝日は現役14名、浪人15名で昨年比2名減らしていた。毎年多くの合格者を出してきた四国の4医学科が半減したのが響いた。新課程入試を翌年に控え高よびが地元香川医に33名も浪人生を合格させるなど、全国から落としてこられた四国の医学科を現役で突破するのは例年以上に厳しかった。 3位の米子東は生命科学コースを中心に東大理3・東北大・名大・九大・岡山医2名を含む17名、4位の徳島城東が教育大附属中の上位を集めた数理コースから名大・岡山医各1名など15名と好調だった。地方公立校でも理数科や特進クラスを設けて国立医学科合格者を増やしている。
後期の定員が年々削減される中、受験機会を増やすためにも現役時から国公立医学科の定員の1/4を占める総合型・学校型推薦なども視野に入れるべきだと考えるが「難関医学科にチャレンジしたい」と浪人覚悟で前期1本勝負する人も多い。一方、近い将来、医師数が過剰になるのは確実で「医学科定員を段階的に削減していく」方針が厚生労働省の医師需給分科会でも確認された。現高3生が受験する2024年度までは2019年度の医学科総定員数(9420人)を上限として維持される(2022年度は9330人まで減少)が、現高2生が受験する2025年以降の臨時定員については第8次医療計画に関する検討会を踏まえ、改めて議論されるようだ。国の政策で増員された医学科の期限付き臨時定員はコロナ禍もあり延長されてきたが、いつ打ち切られてもおかしくない状況だ。僅差で合否が分かれる医学科入試では過度に大学名にこだわらず合格可能性を上げることを優先すべきでないだろうか?幼少期からの長かった受験人生の全てを出し切って必死の努力で現役合格していった塾生たちの壮絶な戦いに寄り添ってきたリアルな体験から想うところだ。