目まぐるしく変化する国公立大医学科入試!?
理系最難関の医学部医学科では国公立大学では入試変更が他学部と比べて多い感がある。その意味では情報戦に強い高校や塾の役割も大きい。受験生の混乱を避けるため国立大学では変更の2年前に公示するルールがあるが、既に2026年度入試及び2027年度入試で次の国立医学科が変更を予告している。
★岡山医:地域枠推薦での減員
岡山医の地域枠推薦は岡山県枠4名、広島県枠2名、兵庫県枠2名、鳥取県枠1名の計9名の募集だったが、今年度の入試から臨時増員分だった鳥取県枠1名が廃止となる。鳥取県の生徒が確実に受かる枠が無くなり推薦枠を争っていた公立トップの米子東や鳥取西高校にとっては痛手であろう。共通テストの基準点は900点満点で780点(86.7%)と国立医学科の推薦入試では全国最高レベルだったが、今年度から新設された情報Iを加えた950点満点でも820点(86.3%)と高水準を維持した。昨年は基準点を満たさない受験者は合格させず、計6名の欠員補充2次募集を行ったので、今年度も基準点以下で合格するのは難しいだろう。尚、岡山県1名を除く臨時定員地域枠7名は期限切れで毎年文科省に延長の認可を受けており近い将来廃止の可能性もある。推薦を受験する人の中には一般枠でも受かる学力を持つ人もいるので推薦枠減員は一般試験での競争激化につながるかもしれない。
★佐賀医:後期入試廃止、地域枠推薦での減員、理科指定科目変更
国公立大学で佐賀大医学科、名古屋市大医学科のみ共通テストも2次試験も物理・化学指定だったが、2027年度から生物で受験可能になる。生物選択は比較的女子が多いので女子の受験者増が見込まれる。また24年度に10名から4名に減員された後期定員が25年度に廃止となる。次から次へと後期入試がなくなり国公立医学科入試はより前期一発勝負となり競争が激化している。続いて26年度から地域枠推薦の長崎県枠が廃止となる「医学部臨時定員の確保が困難になったため」と佐賀大は発表しており、岡山医と共に地域枠で増やしてきた医学科臨時増員枠も減少に転じた。これまで地域枠を受けていた地元の上位層が一般枠に流入して過酷な競争が更に激化するのは避けられないだろう。
★広島医:面接配点の追加、足切り倍率の厳格化
英語外部試験B2レベルで共通テストみなし満点、理科重視、英語・数学重視配点など理数の記述試験が得意なら一発逆転を狙える入試を行う広大医学科が2027年度から共通テスト1000点、2次試験1600点に加え、面接に200点配点する。足切り倍率も4倍から3倍に厳格化する予定。2段階選抜が7倍だった22年までは1人当たり5分以内しか時間をかけることができなかった面接もじっくりと見られるようになるだろう。
臨時増員枠の減員も始まり、2030年以降の医師過剰時代を控えて国公立医学科への入り口はこれ以上広くなることはないので、できるだけ早いうちに合格を掴んでおいた方が賢明だ。また、入試制度の変更ではないが、2025年に琉球大医学部キャンパスと附属病院が約6キロ離れた宜野湾市に移転する。国立医学部のキャンパスが全面移転するのは日本初だ。米軍基地の住宅地跡に国家プロジェクトとして新築した。予算を削られた四国の国立大学などは耐震工事で老朽化した校舎、附属病院を何とか持たせているが沖縄県は復興予算に恵まれているのだろう。近畿大医学部も2025年に狭山市から政令指定都市の堺市に全面移転するが、東の日大と並ぶ西のメガ私立総合大学のリソースは潤沢だ。
医学部ではないが、文系の超難関大学である一橋大学が長年出題されてきた英語のリスニング問題を廃止する。英文を3回リピートしてくれるので比較的簡単だったが、これで国公立大でリスニングを出題するのは東大、東京外語大、阪大外国語学部、神戸市外大、東京学芸大(教育学部英語)、新潟大(教育学部英語)の6校となる。
センター試験から大学入学共通テストへの移行、新学習指導要領による数学、地歴・公民分野の科目再編などに加え、各国公立大学の個別試験での変更など目まぐるしく変わる大学入試はまさに情報戦と化している。2025年は18歳人口が一時的に増加に転じた年で、共通テストの出願者数も7年ぶりに約3300人増加した。現役生の割合は45.6%で前身のセンター試験を通じて過去最高となった。今年度は本試がずれ込んだため追試は1週間後の1月25・26日、東日本は東京農工大・東京外語大、西日本は大阪大・大阪教育大の計4校が追試験会場となる。本試の出題傾向を見られるので追試は本試より1割位難易度Upになると言われ、2次試験の対策時間も削られるので塾生には体調にはくれぐれも気をつけて本試一発で決めて欲しいと願うばかりだ。