国公立医学部医学科の難しさとは?
近年、女子・多浪者差別問題で私立医大のカネ(高額な寄付金)、コネ(OB枠など)による不正入試の実態が暴かれたが、国公立の医学科合格には間違いなくアタマが必要となる。幸い第1期生から香川大医学科に現役合格者が出すことができたが、県内屈指の伝統校岡山朝日のラ・サールW合格の生徒でも「針の穴に糸を通す」ような難しさを痛感した。
近年の医学部人気で私立医大の偏差値も上昇しているが、あくまで正規合格者の偏差値。実際入学した人の偏差値はそれよりかなり低くなる。滑り止めで受験する上位合格者の多くは学費の安い国公立医学科にも合格し入学辞退する。補欠で合格できるかは平均学費(約3300万円+寄付金など)を払えるのか?経済力という本人の学力以外の要素が左右する。
日本の高度成長期、理系上位層は研究者や大手メーカーを目指し東大を頂点とする理工系学部に進学していたが、その後の経済の低迷、緊縮国家財政で中央官庁の役人や大手企業サラリーマンの魅力が薄らいできたため、理系上位は東大より医学科を目指すようになった。地方国公立医学科の偏差値が急上昇したのも東大合格レベルの受験生が全国区で勝負するようになったからだ。
地方国公立大の医学科でも共通テストでは高偏差値が必要となる。入試改革2年目の超難化で予備校の合格ボーダーも急落したが偏差値的には地方医学科の方が東大・京大を除く旧帝理工学部より高い。駿台データネットの集計で国公立医学科志願者の8割(720点)越えが約1700人、全体でも約8000人しかいなかったのは衝撃的だ。大手塾のトップ層でも最低平均点だった理数科目には歯が立たたず、各進学校の自己採点会はまるでお通夜みたいだったと聞く。
共通テストでやらかしたので2次逆転を目指すといっても1次マークの配点が高く、2次試験が他学部との共通問題であることが多い地方総合大学では高い学力を持つライバルとの差を詰めるのは困難だ。他学部と比べ上位と下位との偏差値の差が小さく、ほんの少しのミスで合否が分かれるところが医学科入試の難しさだ。
どこの医学科も全国区の戦いとなる。岡山大医学科では昨年県内の高校から現役合格者10名前後。国公立医学科合格者数全国一の東海、現役合格率トップの久留米大附設など県外の有名私立に攻め込まれた。高知大には筑波大と共に医学科で共テを課さない総合型選抜もあるが、中四国の医学科を目指す浪人生が集まる高予備でも定員30名中3名しか合格していなかった。地方国立医学科でもまさに全国区の戦いとなる。
今年の本試は理数科目の超難化且つ国語の難化で、理系の受験生は英語で取れていなければ厳しい戦いだ。当塾が説いている「英語はセーフティーネット」という役割が実証された今年の共通テストだった。伸ばすのに辛抱と時間はかかるが一旦安定すると下振れが少ない英語が命綱になった形だ。今回の勝ち組は数学苦手でも、英・国は得意な人だったのでは?「飛び道具」と言われる数学・理科頼みの英・国が苦手な理系の生徒には試練の年となっている。
毎年12月の冬休み前から各高校は共通テストマラソンと称す、安価な学校専用教材を使った短期対策を行う。時間がかかる速読力・リスニング力が要される英語には効果がなさそうだが、理数科目も暗記再生型から変貌し過去問のコピー問題を付け焼き刃で練習しても跳ね返されたことだろう。英語でも入試センターが満点阻止してきた形跡が何カ所か見られた。地道に本質的な実力をつけてもらうしかないと考える。