国公立医学科への合格力(公立高校編)
国公立医学科合格者数が3年連続公立高校トップで全国11位の札幌南は51名が合格した。北海道では教育委員会が医学部進学を目指す生徒への支援を行う「地域医療を支える人づくりプロジェクト」を実施、札幌医大、旭川医大の協力のもと道立高校の生徒を対象に「メディカルキャンプセミナー」を行っており、札幌南の生徒も積極的に参加している。今春は北大医学科を含む3つの医大で合格者43名と北海道ドミナント戦略をとっている。
多くの地方トップ公立高が苦戦する中、2位の新潟は45名と前年比17名の増加で全国13位。山間部が多く慢性的な医師不足に悩む新潟県では07年に新潟高校の理数科にメディカルコースを設置した。新潟大学医学部訪問や病院見学、医学系の課題研究などを行い、医師の使命感と倫理観を養っている。
公立3位、全国14位の仙台第二(44名)は、10年度から医師を目指す生徒のために「医進会」という3年間のプログラムを始めた。体験学習として都市部の総合病院見学や地域医療体験などを行う。医学科受験の学習支援としては合同合宿、小論文・面接指導などを行っている。
トップ30にランクインした公立校の状況をみると、地元大学の医学部に強い伝統校が多い。札幌南は北大医学科(13名)、新潟は新潟大医学科合格者数トップ(23名)、東北大医学科合格者数トップ(12名)の仙台第二と並ぶ44名で全国14位の熊本は熊本大医学科で合格者数トップ(25名)に立つ。私立校のようなリソースに恵まれない公立でもユニークな体験型プログラムの実施など自助努力をする高校は結果を出してきている。
一方、昨年から減らした公立有名校は、秋田22名(前年比13名減)、富山中部24名(同14名減)、愛知の旭丘30名(同13名減)、大分上野丘27名(前年比14名減)など。今春の国公立大学医学科の志願倍率はトップ私立校でIT・情報系を目指す理工系の志願者が増加し、前年度の6.1倍から5.5倍へ下がった。多少医学部離れがあったとはいえセンター試験と2次試験の両方でミスが許されない厳しい競争であることは変わらない。
今後の傾向について駿台教育研究所は「新型コロナウイルスが鍵を握るとみている。世界的な流行による医療崩壊が起こる一方、テレワークなどIT技術の可能性が示された。これで情報系の人気が上がるだろう。医学科志願者はさらに減りそうだ」志願者減に加え、浪人生が薄くなり来年度入試ではハードルがさらに下がる。医学科が難関であることに変わりはないが、来春の現役志望者には歓迎材料になるかもしれない。