センター試験の残した宿題とは?
昨年1月、1979年の共通一次試験から40年余りの幕を閉じた大学入試センター試験。その成果と課題を振り返るシンポジウムを、大学入試センターが11月に開いた。「改革のなかで、センター試験がどんな試験だったかという議論はほどんどなかった。今こそ記憶に残す必要がある」大学入試センターの山本理事長がこう趣旨を説明した。
続いて、センター試験の実施統括の経験を持つ大学教授が発表。今回の入試改革は「高大接続改革」として高校教育、入試、大学教育を一体で考えようとしたが、そこで取り上げられなかった問題を3点挙げた。
一つは英語民間試験の活用で地域格差や家庭の経済格差が問題になったが、センター試験を出願に使う生徒は高校新卒の3割のみのため、センター試験以外の選抜で「教育の機会均等」はどうなっているのかという点。二つ目は国立教育政策研究所の調査で「授業がわかる」と答えた高校生は5割だった一方、全体の8割が大学に進学しており、学力不問の試験が広がって高校と大学の境界が溶けてしまっているのではないかという点。三つ目は、大学入学共通テストは高校の学習指導要領と密接な関係があるが、大学の学問領域とどうつなぐのかという点だ。
大学入試センター理事が、センター試験の舞台裏について、全国700近くの試験会場を用意し、約2万個の専用コンテナで試験問題などを輸送し、延べ18万人が試験監督や警備などを担当してきたと説明。試験の肥大化で関係者の負担が重くなり、大学側がセンターと協力して実施していくという意識が薄くなっていたことも指摘した。
試験のデータも分析され、センター試験を受けながら、既にAO・推薦入試で進学が決まっていることなどから大学に出願しない「未出願者」が2018年全体の志願者58万人中13万人いる。5教科7科目受け国公立大に出願する「中核層」と、一部の教科を受け私大だけに出願する者と「未出願者」を合わせた「新参入層」の分化が進んでいるといった志願者動向を解析した。
センター試験の問題点として、作問者の配点で出した素点で順位付けはするが、毎年の得点を比較できるよう統計処理しなかったことを挙げた。点数を再分析したところ、浪人と現役、高校やその所在地域で差が開いていることや、理科の選択科目で難易度が毎年大きく変動したことを指摘「点数を統計処理していれば、ここまで差が開く前にわかったはずだ」と振り返った。
南風原・東大名誉教授(テスト理論)は「どこに問題があったか議論されないままセンター試験の廃止だけが早々に決まった」として「非業の最期」と表現。本来入学試験は大学がセンターと協力して実施するものだが「主体であるべき大学の影が薄いのが問題」「作問の先生を確保するのが難しいので入試問題を外注する私大もある」などと指摘。大学入試センターも「共通の枠組みはコストもかかるので、よりスリムな形で実施していくのが当面の課題。大学教育に直接につながる試験を大学自身が作ってもよいのではないか」と提案した。入試センターに頼りっぱなしの大学側にも問題があります。99%の国立大が記述問題を個別試験で課すのに対して、4%しか入試で記述問題を出題できていない私立大の中には自然淘汰されていく大学が出てきても仕方ないと思います。