今年度の新課程共通テストは難化傾向か?
1979年の共通一次試験開始から2020年に大学入試センター試験がその役割を終えるまでの約40年間、大学入試で暗記が要されるインプット中心の形式は変わらなかった。それが、2021年に始まった大学入学共通テストによって、求められる学力観が思考力や判断力、表現力を重視する形へ変革した。
もちろん、それまでも学校現場では思考力や判断力などを向上させようと探究的教育に取り組む動きはあった。しかしながら、大半の受験生の最終目標である大学入試で役に立たないと軽視され、取り組む教員たちは肩身の狭い思いをしてきた。入試の形式が探究教育を阻害する要因だったが入試改革によってそのブレーキが外れたことの影響は大きい。
高校の新学習指導要領を受け、今年度から新課程を踏まえた入試となる。大学入学共通テストはプログラミングを含む情報Iを加えた7教科21科目に再編され、地歴・公民では現代社会から新科目公共への切り替え、近代の日本史と世界史を横断する歴史総合の新設などが行われ、国語・数学IIBCでは試験時間が10分延長される。社会科目が大改編され、文系数学で殆ど扱わない旧数III分野の複素数平面や新設される情報Iなどの理系科目の負担が増える国公立大学文系受験生が最も影響を受けそうだ。これまでの入試改革では新教科が追加されることはなかった。
河合塾によると、新課程入試を含めた大学入試改革の一連の流れを見ると、共通テストはこれから更に難化していくという見方ができるという。来年の共通テストでの数学IIBCや国語(現代国語で大問1つ追加)での試験時間の延長は「考えてもらう時間を増やす」という作問者からのメッセージとも受け取られ、昨年度からそれほど易化することはなさそうだ。また、今年度のみ経過措置科目(旧数学IIB、旧地歴・公民)を受けられる浪人生にとっては「絶対に合格を決めなければならない」最後の年となる。全国の既卒生が中四国の地方国立医学科などに安定志向で降りてきて競争が激化することが予想される。私立医大の何校かは国試に受かりにくい多浪生を受験させない意図か?「新課程で実施します」と経過措置を設けない大学もあるそうだ。
これからのVUCAと言われる不確実な時代では、予測できない事象にどう対応していくかが大切となる。受験でも過去問と似たパターンの問題に答えられるかより、見たことのない初見問題を解けるかが勝負となる。英語も大学入試センターが実施したモニター調査の大問8題構成に代わると予想され、今年から駿台・河合塾・東進模試も8題構成で出されている。入試センターが公表した試作問題がそのまま出題されればいいが、2021年の第1回共通テストでは試行問題ベースの模試に慣らされてきた受験生が「見たこともない問題」と試験会場で戸惑う声も多かった。今回も試作問題がそのまま出ることはあるまい。塾生にはどんな形式の問題にも対応できるよう様々なタイプの問題を解かせて経験値を上げ、本番力を養ってもらっている。
受験対策としては、教科書を読んだり、学校や塾の授業を聞いたりという与えられた課題をこなす従来の学習法だけでは中々点数は伸びないだろうと河合塾は指摘する。共通テストでは過去問対策だけでは対応できない「入試本番で何とかする力」を身に付ける必要が出てくる。物事を深く考える力や複数の資料を読み解いて答えを導き出す本質的な学力が問われるようになったからだ。また本番までに「設問毎に何分かけるかというペース配分を練習して、共通テスト向けの体内時計を鍛えて欲しい」と指導しているそうだ。受験まで時間がある高1・2年生に対しては「複雑な場面設定がされた長い文章を状況把握をして理解するには慣れが必要なので、日頃から大手新聞の社説などに触れておくと良い練習になるだろう」と話す。
受験は運の要素も大きい。特に塾生の多くが目指す旧帝大や医学部医学科のような難関国立大学は各高校上位の生徒が僅差で約3倍の競争を戦い、入試当日のコンディションや出題内容によって合格する人が入れ替わることも多々ある。でも、受験はただの運頼りではなく、自分の努力次第で受かる確率をいくらでも上げられる。毎年年末にかけて現役生の目を見張るラストスパートに感動させられる。今年の第5期生は初の全員女子クラスだが、高1から雨の日も寒い冬の早朝も執念で通い続けてくれた。みんな最後まであきらめずに走り切ってくれると信じている。