文部科学省の良識を疑う要請方針!?
文部科学省は去年に続き、各大学へ新型コロナウイルスで影響を受けた受験生へ救済策を検討するが、今年は大学入学共通テストの本試験と追試験を両方受けられなかった生徒について「個別試験のみでの合否判定」を可能にするように各国公私立大学に要請した。
しかし、これらは果たして可能なのか?入学試験の根幹は「公平性」である。去年文科省はそれまで大学入試改革の目玉とされてきた英語民間試験の利用をドタキャンしたが、英検などの受験機会の多い都会と地方の格差や複数回の受験料を払えるかどうかの経済力の格差が公平性を損なうという判断からだった。
去年、塾生第1号くんが香川大医学科に現役合格したが、香川医の共テと2次試験の配点は50%ずつ。もし、共テが免除された志望者がいた場合、真面目に感染対策をして受験できた生徒とどうやって公平性を保った合否判定をするのか?(2次試験の結果 x 2倍)=(共テ+2次)とはならないだろう。異なる基準で比べると公平性が破壊されると思われるが…共テによる足切り制度など入試のシステムを理解しているのだろうか?
また、文科省は2月末の個別試験やその追試験も受験できなかった場合には、面接や小論文による「総合型選抜」で再度の追試験の機会を設け、4月以降の入学機会も提供できるよう各大学に柔軟な対応を求めるようだが、大学側は今から準備する時間があるのだろうか?入試科目や配点の変更など大学入試の実施要領は夏ごろ迄に通知することが定められており、共通テスト直前に文科省がこのような要請をするのは超異例だ。
去年は新型コロナウイルスの感染拡大を見込んで、夏ごろに横浜国大などが「共通テストのみ」での合否を決めたが、半年以上前に周知していたので受験生への混乱は免れた。もし、政府の要請通りに2次試験の文系・理系3科目のみで合否を決めれば、国公立大学は大学共通テストで5教科7科目受験しなければならないと頑張ってきた受験生が3科目に絞った私大型の受験生に負けるという理不尽なことも起こりかねないがそこまで考えているのだろうか?
末松文部科学大臣は記者会見で「共通テストは嫌、記述試験だけ受けたいとパスする抜け道にならないのか?」所謂コロナスキップの可能性に関する質問に対して「日本を引っ張っていく若者にはフェアにやっていただきたい」という性善説に終始した答弁をしていた。受験機会に固執するあまり「公平性」という入試の大前提を覆す方策を強いるのは無理筋ではないだろうか?中学・高校の入試でも全国の教育委員会に「書類のみによる選考」も要請するという。それって実質的に学力選抜の全否定では?上から要請するのは簡単だが現場はついていけず、新たな不公平も生ずる。本番直前で無茶ぶりする政府の迷走に振り回される受験生が本当にかわいそうだ。