漂流する大学入試、最近のトレンド変化
大学入試動向に詳しい駿台予備校情報事業部は「2022年度は潮目になった年だと考える。特に私立大学はコロナ禍の影響で志願者数が約15%減ったが、元に戻る気配を感じない。一方、全国模試で偏差値55未満の中下位層の大学では一般入試から総合型(旧AO)、学校推薦型選抜への移行が顕著だった。早慶上理など難関校では一般入試の受験者が増えたが、生徒獲得に苦戦する下位校は総合型・学校推薦募集で囲い込みする道しかなくなっている」と語る。
最近、定員の増加が著しい総合型・推薦については「建前は多様な学生の選抜だが、本音は専願で確実に入学してくれる学生の青田刈りだ。加えて募集定員を絞り込む結果倍率が上がり偏差値を高めに誘導できる。一般入試が機能しない中、下位層の大学では偏差値が実態を表していない。あと数年もすれば難関校以外、偏差値での評価は終わりだと思う」と偏差値時代の終焉を予想する。
また、近年の一般入試離れは親の意識の変化も一因となっている。駿台は「最近の親世代はAO・推薦が広がり始めた時代に育ったので抵抗がない」高校側が「一般入試で第一志望を貫け」と鼓舞しても「自分も妻も推薦入学だけど推薦を狙うのはダメなのか?」と言い返される「厳しい競争を突破して中高一貫の進学校に入った上位層との間で保護者も子供も二極化している」と指摘する。
しかも社会が多様化して、プロスポーツ選手や芸能人などで成功しない限り、普通の仕事では高収入が約束されなくなった。みんな「必死で難関大学に入っても人生そんなに変わらない」と思っている。それが今の社会の空気だ。だから浪人してまで第一志望校を目指すなど無理はしなくなった。大学入学共通テスト(旧センター試験)を受験した浪人生がここ10年で3割も減るなど、浪人生という存在が激減している。河合塾は福山校、駿台も関東の2校を閉校するなど予備校業界も厳しい状況だ。
「今は入れる大学を選ぶ受験者層が増えている。大学側も国公立・私立の100校程度と医学部など医療系学部以外は選抜機能を失っている。特に新興の地方私立大学は深刻だ。近い将来、持続可能性を無視し乱立した定員割れするFラン大学に見切りをつける人も増えるだろう」と駿台予備校は警笛を鳴らしている。