足切りが予想される国公立医学科は?
他学部には見られない国公立医学科への競争の激しさを示す例として、出願最終日まで駆け引きが続くことがある。Web出願できない和歌山県立医大などは願書を取り寄せるだけで超面倒だし、飛行機で願書を持ち込むご父兄もいるぐらいだ。その理由として医学科では第1段階選抜(共通テスト得点による足切り)が設定され、足切り=浪人決定となる場合が多いからだ。昨年も足切り倍率4倍の岡山医で150名、同4倍の香川医で200名以上が門前払いとなった。足切り発表後には高松・岡山の予備校さんが推薦合格者を写真付きで掲載し合う広告バトルで浪人が決まった人の争奪に火花を散らしていた。
河合塾が共テリサーチで足切り予想をしている中四国の医学科の傾斜配点後ボーダー(足切り)%は次の通り、
岡山医前期:83%(79%)→足切り倍率3倍
広島医前期:83%(71%)→足切り倍率5倍
徳島医前期:81%(75%)→足切り倍率5倍/基準600点
香川医前期:80%(69%)→足切り倍率4倍
愛媛医前期:80%(69%)→足切り倍率6倍
鳥取医前期:79%(67%)→足切り基準600点
高知医前期:79%(70%)→足切り倍率4倍
出願倍率で区切る大学が大半だが、名古屋医、神戸医、鳥取医などでは共テの基準点によって足切りがされる。また京都医、大阪医、徳島医のように倍率と得点両方の基準を設けている大学もある。昨年は足切り倍率4倍で150名以上門前払いした岡山医は今年3倍まで締めてきており、最後日まで慎重な出願状況でナーバスな駆け引きが続いているようだ。メインの前期2次試験、前期より高い足切り基準の後期試験を受験する権利を得るためにも共通テストで高い点数を取ることが必要条件となる。
足切りを設けてなかった名大医学科は昨年初めて共テ700点の基準点を設定したが、共通テスト難化により高い基準点を警戒したのか?出願倍率が1.7倍まで落ち込んだ。今年は600点まで緩和したのでどうなるか?大学側が対応できる面接者数に絞るという意味では共テの難易度に関わらず一定数まで絞れる倍率基準の方がいいと思うが、東海の盟主名医さんは未だ足切りに慣れてないですね。尚、難易度は受験者層によって決まるので、倍率が低くても強い受験生が集まれば穴場にはならない。結局名医の去年の合格者共テ平均は85%と強者同士の戦いだった。
共テリサーチ時点で河合塾が足切り無しを見込んでいた大学は、札幌医(5倍)、北海道医(3.5倍)、及び中国地方の山口医(7倍)など。但し、旧帝大の北大以外は共テ配点が5割以上あり2次で逆転できる余地は少ない。面接ができる人数に限界があるのも足切りの実施理由だが、推薦・地域枠中心の札幌医は北海道外の一般枠が20名と少なく、山口医も推薦率が36%と高いため足切り倍率を高くできる事情がある。年々総合型・学校型推薦枠の割合が増えていることも一般枠の競争をさらに厳しくしている。
一昨年あたりから医学科人気は復活トレンドだが、難化した昨年と比べると平均点の上昇もあり、受験生が強気に医学科へ挑戦してきている(駿台の志望動向で前年比113%)が、共テ得点率90%以上取れた最上位層は一昨年より少なく、75%から85%辺りに多くの国立医学科志望者が団子状態になる大混戦となっている。これは東北の福島県立医、山陰の島根医レベルが倍率10倍を超えたことで示されている。予備校の中には倍率は関係ないと言い切る所もある。難易度は受験者層が決めるのは確かだが、東大でも下位1/4から1/3は本番当日の出来次第で合否が入れ替わるといわれ、出願者(中には2次が滅法強い人もいる)が増えるほどミスした場合のリスク許容度は下がる。毎年出願の段階から壮絶な争いが展開されるのも国公立医学科の特徴だ。