九州の国立医学科の共テ合格ボーダー速報
努力は実る!で有名な北よびさんが、2大予備校に先んじて九州地区8校プラス山口大医学科の共通テスト合格可能ボーダーを発表したので分析してみた。山口県は中国地方だが、北九州市と関門海峡で結ばれており九州経済圏に属する。山口大医学科も新山口駅前に校舎を持つ北よびが断然強く、中四国全域から特待生を集める高よびでも昨年の合格者はゼロだった。久留米大附設など九州の強豪校に攻め込まれ、地元宇部高などトップ公立校の選ばれし理数科生でも地域枠推薦以外で合格するのは困難となっている。
北予備が発表した50%合格可能性ボーダー共テ得点率を高い順に並べると昨年度とまたまた順位が入れ替わっていた。去年は今年唯一ボーダー下落の佐賀医が王者九大に続く下刻上の展開だったが、九州医(1000点満点でボーダー873点)に大分医(840点)、旧六医大の長崎医(827点)・熊本医(822点)が続くという順当なランキングに戻っていた。昨年何故か異常に高かった佐賀医を除く8大学の昨年比ボーダーは旧六医の2大学で3%前後、下位の大学で1%前後上がっていた。
九州医:87.3%↑(昨年86.6%)
大分医:84.0%↑(80.0%)
長崎医:82.7%↑(80.0%)
熊本医:82.2%↑(78.7%)
鹿児島医:82.1%↑(81.1%)
山口医:82.1%↑(77.7%)
琉球医:81.0%↑(80.0%)
佐賀医:79.6%↓(80.9%)
宮崎医:79.0%↑(78.3%)
昨年度九医に次ぐ伝統校の長医・熊医が鹿児島医・佐賀医の後塵を拝す、番狂わせな難易度ランクになった主な要因は「あの分量を読み切るのは無理ゲー」と多くの受験生から悲鳴が上がった英語リーディング(R)だった。王者九州医、上位に食い込んだ大分医・琉球医は英語R:L配点が1:1でリスニング(L)が9割取れていれば英語Rのマイナス度が軽く、トップ3入りした鹿児島医は広島医と同じく英語外部試験B2(英検準1級)レベルで共テ英語みなし満点、佐賀医も外部試験での加点制度がもらえた。長崎医・熊本医、宮崎医・山口医と下位に沈んだ大学は4:1配点でR難化のダメージが1.6倍されたのが低迷した原因。今年度は分量の減ったリーディング、国語で失敗しなかった旧六医志望の理系最上位層が更に総合点を伸ばした結果が示された。大分医が2位に食い込んだのは異常値だが、毎年地域枠を中心に20名前後合格させる公立トップ大分上野丘高校の上位層の出来が良かったのかもしれない。
北よびの得点度数分布を易化・難化した科目を中心に見てみると、
(受験者数約4.4万人中、北よびは医歯薬系志望の理系がメイン)
1000点中850点以上:630人→963人(+333名)
1000点中800点以上:1410人→1668人 (+258名)
数学IAで90点以上:399人→859人↑
数学IIBCで90点以上:686人→937人↑
化学で90点以上:440人→103人↓
物理で90点以上: 685人→500人 ↓
生物で90点以上:42人→68人↑
地理探究で90点以上:294人→122人 ↓
世界史探究で90点以上:316人→300人 ↓
日本史探究で90点以上:148人→112人↓
国語で190点以上:163人→301人↑
英語で190点以上:189人→805人↑
以上、医歯薬系志望の理系メインの北よびのデータから言えるのは、
★理系でも化学は超難化、物理も難化で生物選択との差が縮小
★数学力の出るIIBCでは9割以上取れる人とそれ以下の人の差が拡がった
★英語もRの分量減少による易化で8割以上取れる実力の人は得点を伸ばした
★英語リスニング(L)の難化で1:1配点の広大などの英語前年比はほぼ変わらず
★理系で国語に力を入れていなかった人は大きく差をつけられた
★85%以上取る最上位層は更に伸ばしたが(前年比+333名)、その下の80%前後の層(同+258名)は難化した物理・化学・地理などでの失点が大きく伸び悩んだ。
まとめると、国立医学科の志望者間では、物理と生物選択間で差が縮小、理科2科目と数学IIBCで高得点できた人が国語・英語Rで取りこぼさなければ大きく差を拡げられた。日本史の歴史総合部分がほぼ世界史分野だったので平均点下落となり、地理は昨年より難化し理系の最大母数が選択する地理と世界史選択で差がついた。配点の高い国語・英語Rは読解力の高い人が高得点を取り切った。3年連続の難化で最低平均点まで落ち込んだ英語Rは分量を減らして正常化、2年の任期を終える作問チームは来年は容赦しないとの予想から来年度の新高3生にはリーディング難化警報を出したい。8割以上取るのが困難な地理一択にされた岡山伝統校の塾生の皆さんは本当に気の毒だ。共産主義か!と言いたい。
経過措置で旧数学や旧地歴を受験した浪人生の平均点が新課程受験者を各科目大幅に上回っており今年は圧倒的に既卒生有利、現役の最上位層以外は苦戦し浪人生が多数発生するだろうから予備校さんはホクホク顔だろう。どの科目も最上位層とその下の上位ミドル層の間の断層が更に拡がった模様。大学受験も人生と同様に格差がどんどん拡がる競争激化の時代に突入している。
5年前の入試改革で始まった共通テストは年々読解力ゲームの本性を現わしてきている。その年の国語と英語Rの難易度により平均点が大きく動くからだ。北よびの九州地区4万人余りの集計では昨年と同じ900点満点換算での平均点は意外にも1点しか上がっていなかった。1000点満点での12点Upは新科目で大盤振る舞いとなった情報I効果が大きいので皆取れた情報は考慮せずに900点換算で得点差をを見た方が手堅いかもしれない。英語はRと平均点を下げたLでほぼ相殺され、国語が上がった分も理系の大多数が選択した化学・物理・地理の難化で相殺されたので平均点としては皆が易化!易化!とネットで騒ぐほど上がっていない。但し最難関の医学科では実力差が顕著になった化学・物理・数学IIBCを苦にせず、国語・英語Rもしっかり取れた最上位層とその下の上位層の差が更に拡がり、上位層の中でも二極化が鮮明になっている。文系科目も取りこぼさず800点後半を確保した最上位層がどれくらい絶対合格を狙って下位医学科に落としてくるかでミドル層の運命が左右される展開を予想する。