コロナ禍でさらに強まる「理高文低」志向
大都市部で感染再拡大の様相を呈するコロナ禍。それは2021年の大学入試に挑む受験生の志望動向にも影響を与えそうだ。今回は「人気学部」をいう観点から入試のエキスパートの展望を紹介する。
新型コロナウイルス感染拡大は日本経済に深刻な打撃を与え、学生の就職にも影を落としている。航空業界や旅行業界を中心に様々な職種で新卒採用中止や採用者数縮小の動きが出てきている。では、大学の志望動向にどのような変化が予想されるのか?大学通信は「不況になると、企業はまず事務系の職種からリストラしていきます。一方、専門性の高い理系の職種は比較的安定した就職率を保ちます。そうなると、学部選びでは文系の志望者が減少し、理系の人気が高まります。21年度入試は「理高文低」がより顕著になると予想されます」
駿台教育研究所も理系人気が高まるとみる。さらに理系の中で、プログラミングや通信技術を学ぶ情報系の学部が人気を集めていくと予測する「ITやAIが世間のトピックになり志望者が増えていたところに、コロナ禍で情報技術の活用範囲がさらに広まりました。休校期間中にオンラインで授業を受けた受験生も多いため関心は高まっていますし、将来性を感じていると思います」
コロナ禍で重要な役割を果たしている医学や看護、薬学などの医療系はどうか?大学通信によると「医療系の動きは予想が難しいところです。未知のウイルスに挑戦する使命感で医師を目指す学生が増加するという意見もある一方、院内感染などのリスクを考えためらう受験生も出てくるかもしれません。一般に保護者は心配するでしょう」医療系について、駿台教育研究所は都市部と地方で差が生じる可能性に言及する「多数の就職先がある都市部では、医療系を目指していた学生が情報系など他の理系学部に流れることもあるでしょう。一方、就職先が限られてくる地方では、医学部志望生は腹をくくって簡単には進路を変えないと思います」
人気の低下が予想される文系学部については、考え方によっては受験生にとって思いもよらないチャンスが訪れるかもしれない。代ゼミ教育総合研究所は「21年度入試の受験生が就職活動をする4年後には、新型コロナの流行も収束し就職状況も回復している可能性も十分あり得ます。そう考えれば今年入り易くなる学部は受験生にとって「穴場」と言えます。受験生には屈せずに挑戦してもらいたいですね」志があるなら、動じないことも大切なようです。