理系難関大学で相次ぐ女子枠設定は男女差別なのか?
数学の国際会議などを見ても海外では女性研究者も多く、普通に数学を専門として選んでいる。だが日本では医師、薬剤師といった国家資格を持つことが女性のキャリア上有利と考える傾向が強い。日本では医師の社会的地位が非常に高いが、米国ではアイビーリーグなど著名大学のPh.D(博士号)の方がM.D(医学博士)よりステータスが高く、博士号を持つ教授の給与も日本より高い。日本と同様に大学入試が点数主義である中国や韓国のトップ大学は男女比が半々に近いが、東大・京大の女子比率は2割程度しかないのが現状だ。
そういった偏り是正のため、京大は2026年の特色入試で理学部が15名、工学部は24名の「女性募集枠」を設ける。男子学生比率が圧倒的に高い東工大の女子枠設定でも賛否両論が巻き起こったが、京大が女子枠の設定に踏み切った理由を副学長に聞いてみた。
「理・工学部では女性比率の向上に向けて様々な取り組みをしてきたが、目に見える結果が出ていなかった。両学部から要望があり全学的な場で検討し、社会へのメッセージとして枠を設けるという決断に至った。もちろん否定的な意見もあった。得点で評価する一般入試に性別という軸を入れれば不平等の問題が起こる。特色入試は学校推薦型や総合型選抜であり、多様な観点の一つとして性別を入れるのは妥当で合理性がある。但し、男女比の偏りが是正されるまでの過渡的な方策だと認識している」
難しい議論を重ねた上での決断だったが、特に京大のような難関大学での女子枠は「女性は理系科目で点数が取れないから下駄を履かせる」という逆のメッセージになってしまう恐れがある。より懸念されるのは入学者に「能力的に劣っているという烙印を与えてしまうことだ。これらの懸念に対して京大側は「特色入試は16年度から始まった。入学した学生は一般入試を経た学生とは違う長所があり、意欲も高く優れているという実績が既に十分ある。女性募集枠でも実力不足の学生が合格することは決してない」とする。
「女子が東大・京大を受けないのは、実力はあるのに支援が足りてないからだ。それでも頑張っている生徒がいる中で入試の女子枠は女性が能力を伸ばす機会をかえって奪わないか心配だ。理系職場で女性が働く環境が整い、理系学部を目指す女子が増えるというのが導く方向だ。大学側から見ても学生の構成(京大工学部では9:1と男子が独占)が社会とかけ離れていることは教育にひずみを生む。男性ばかりの理・工学部の現状はあまりにも不自然で、その解消が教育研究にプラスとなるのは間違いないだろう。また女性が入りたいと思える理・工学部に変われるかも課題だ。平等化装置としての大学を実現していきたい」と京大は締めくくっている。
当塾でも現在女子生徒が7割以上を占めている。理系では最難関の国立医学科志望者が多い。男子受験生が医学部入試の過酷さを嘆くのも理系上位の女子がこぞって医学部医学科を目指すようになったのが一因だろう。予備校の浪人が以前ほど受からなくなっているのも現役志向の女子生徒に医師を目指す人が増えている影響もあるだろう。東大理3の現役占有率が全国の国公立医学科トップとなっていることは大学入試においてはその学年の現役最上位が最も強い受験生であることを証明している。