共通テストの目標点設定はあまり意味がない!?
当塾で志望者の多い国公立医学科に合格するための第1関門は、共通テストで高得点を取ることだ。1次の足切り基準(22年度は岡山医が4倍→3倍、広島医が7倍→5倍へ引き締め)もクリアしなければならないことを考えると、共通テストの重要性は更に増したといえる。 河合塾共通テストリサーチ研究会が公表した資料によれば国公立医学科に最低限必要な得点は次の通り推移している。
2020年度(最終センター試験):85%(765点)
2021年度(第1回共通テスト):80%↓(720点)
2022年度(第2回共通テスト):75%↓(675点)
得点率推移からも、センター試験から共通テストに移行後かなり難化しており、センター試験時代とは違った戦略が求められることは明らかだ。難化した今春の共テでは最難関の東京医科歯科大のボーダーでも84%程度だったので、開成や桜陰などの医科歯科合格者でも85%以上取れた人は半数もいなかったはずだ。
国公立医学科受験においては本人の希望はともかく、1次マークの自己採点で出願校を決める場合が多い。自らの合格確率を最大化するため採点結果を駿台や河合塾の合格判定リサーチに入力し、北は旭川医から南は琉球医まで全国50校の志望者内順位を検討してから出願するので模試段階での志望校は暫定的なものでしかない。特に岡山医など地方国立上位レベルの合格が最後まで読めないのは、大阪医・神戸医など難関校から絶対合格を狙って落としてくる人や山陰・四国などの地元医学科のA判定を捨てて挑戦してくる強い受験生との挟み撃ちにあうからだ。また旧六医大の岡山大や金沢大などは他の理系学部と共通の癖のない2次問題なので上位校からの志望変更がし易いことも灘・洛南・甲陽学院などから攻め込まれる要因となっている。
なお難易度が未だ安定しない共通テストで目標点を決めておくのはデメリットが多い。受験教科が難化した際に失点を取り返そうと焦りのあまりミスを犯す2次災害が増すからだ。今春は地方国立医学科の一般入試でもボーダーが大幅に下がり20校以上で75%前後のボーダーだった。センター時代の合格データを基にした目標点は意味をなさなくなっている。
また、定員比率が上がってきている総合型(旧AO)・学校推薦型入試についてもセンター時代は最低8割がボーダーとか言われていたが、今春は7割前半で受かった地方医学科が複数見られた。今年度3名減員した岡山医をはじめ全国的に一般入試(前期・後期)の募集枠が減ってきており、今や定員の1/4以上を占めるようになった推薦入試も視野に入れた方が合格率は上がるだろう。但し、要される評定はA(4.3)以上が多いので高1から計画的に学校の成績を確保しておかなければならない。
入試の合否は(学力)+(本番での得点力)+(出題の相性・その年競う受験者層などの運)で決まる。誰もが緊張する本番で共通テストと2次試験共にミスなく実力通りの結果を出すのは難しく、推薦を前受けして受験機会を増やすことは合格率Upにつながる。国立医学科には現役対象の推薦枠もあるので浪人生と戦わずに済む分現役生にはお得な戦略だ。
共通テスト2年目では、生物の平均点が24点も下がり前年度は物理選択者に対して有利な戦いができた生物選択者にとっては苦しい戦いとなった。同様に社会では日本史の平均点が世界史のマイナス13点となり選択科目の差で志望校変更を余儀なくされた人もいた。地理は8割以上安定させるのが困難な科目なので理系で社会の選択?と問われれば安定している世界史がおススメだが、残念ながら岡山の公立高校では理系で世界史を選択できないようだ。
共通テストは超難化し、多くが苦戦した数学をはじめ理科・社会・国語もまだ難易度が安定していない「思考力重視」の掛け声の中、センター時代より作問に苦心しているのだろう。難易度はセンター英語より上がったが「素速く正確に読め、聞ければ」得点できる英語を伸ばせなければ苦しい戦いとなるだろう。英語担当としては責任を感じる毎日だ。