2027年度から医学科臨時定員が削減の方向へ!?
厚生労働省は1月末の「医師養成課程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」で、2027年度から国公立大学の地域枠を中心に増員してきた臨時定員を人口減による医師過剰時代の到来に備えて削減する方向をまとめた。入学定員など入試の変更事項は受験生に周知するため実施の2年前に告知される。既に大半の国公立大学の臨時定員は期限切れとなっており、毎年10月末に各大学の申請に応じて延長され続けてきたが、ついに現高1生が受験する2027年度入試から減員が始まる予定だ。地方に偏在する医師不足に対応するため2010年から2020年までの10年間で医師数は約45000人増え、医師需給推計によると、2029年頃には医師の需給は均衡し、その後は人口減少に伴い医師過剰に転じる見通しが減員を決定した背景にある。
今年受験する塾生の国立医学科出願時に医学科定員を確認したところ、中四国の大学では、鳥取大2名、岡山大2名(1名は地域枠鳥取県枠)、徳島大1名、香川大3名、高知大1名と医師多数県の医学科の定員が計9名減っていた。岡山大は95名から94名への減員だったが「1名ぐらい変わらない」とかいう人は国立医学科入試の厳しい現実をわかっていない。理系最上位生同士の僅差の戦いで1%以上お子さんの合格確率が減るのだ。全国の医師多数県で計30名台減少していた。
課題として医学科定員の抑制や期限付きの臨時定員(削減が検討されている医師多数県で500名半ば)の東北・甲信越地方など医師少数県への割り振りなどを考える必要がある。私立医大の新設(東北医科薬科・国際医療福祉大)もあり「既に期限切れしている各大学の臨時定員」を延長し続けるのは無理筋だろう。今の定員を維持すると2030年頃から医師の総数が過剰になると見込まれるためだ。医学科定員を減らしつつ地域毎の医師偏在に対応して配置する対策が要される。中四国9医学科で臨時定員は約120名、国立医学部1校が消滅する計算だ。医師少数県の山口大、医師中程度県の広島大・愛媛大の3県以外の医師多数6県の医学科臨時定員は地域枠を中心に今後医師過剰に転ずる2030年まで徐々に減らされていくだろう(4名中3名が臨時定員の岡大岡山県地域枠で2年連続1名のみ合格だったのは減員時の予行練習かも?)。
自分は地域枠を受けないので関係ないと思う人もいるだろうがとんでもない。各医学科の地域枠合格者には地元に残りたい女子生徒を中心に一般枠でも十分受かる学力を持つ人が相当数存在する。四国の中高一貫校では2年前の首席女子が地元医学科の地域枠推薦合格、次席の男子が旧帝大の九大医学科に合格していた。彼女のような上位層が一般枠に参入してくると押し出される人が出てくる。また千葉医のように前期入試に減員分の地域枠を移すと一般枠の定員が削られる。いずれにしろ受験者にとっては門戸が狭まることに繋がる。残念ながら現高1生以降の医学科志望者は多浪年数を重ねるほど合格確率が下がっていく戦いを強いられ今まで以上に過酷な受験競争を勝ち抜かなければならない。
当塾は国立医学科を目指す生徒が多い。現高3生が受験する今年度入試までは臨時増員が毎年延長され、その後の医学科定員をどうするのか?厚労省の議論が本格化していたが残念ながら減らす方向で決まった。当塾では困難な時代到来を先読みして大学名にこだわり過ぎず、受かる大学を最も可能性が高い現役時に一発で仕留め1年でも早く医師になることを優先して欲しいと生徒さんの個別戦略を提案している(修士で研究した統計を駆使するのは楽しいので医専予備校のような高額なカウンセリング料はいただかない)次の年受からなかったら一体どうなるんだろうという不安が付きまとう浪人生活は誰にとっても精神的にきつい。医学科定員減少前の最後の学年となる現高2生にはより精緻な受験戦略で現役合格を掴んでもらいたいと願っている。